はじめに
おしゃぶりは、多くの親が赤ちゃんの泣き声を和らげるためや、安心感を与えるために使用する一般的な育児アイテムです。
しかし、おしゃぶりの使用には利点と注意点が存在します。
本記事では、おしゃぶりの効果と注意点について、エビデンスに基づいて詳しく解説します。
1. おしゃぶりの効果
鎮静効果と安心感の提供
おしゃぶりは赤ちゃんに安心感を与え、泣き声を和らげる効果があります。
吸う動作は、赤ちゃんにとって自然な行動であり、ストレスを軽減し、心を落ち着ける効果があります【1】【2】。
睡眠の促進
おしゃぶりは、赤ちゃんの入眠を助けるツールとしても有効です。寝つきが良くなり、夜間の覚醒が少なくなることで、親にとっても安定した睡眠環境を提供します【3】。
突然死症候群 (SIDS) のリスク軽減
研究によれば、おしゃぶりの使用は乳幼児突然死症候群 (SIDS) のリスクを軽減する可能性があります。
特に、夜間や昼寝中におしゃぶりを使用することで、SIDSの発生率が低下することが報告されています【4】。
2. おしゃぶり使用時の注意点
歯科への影響
長期間のおしゃぶり使用は、歯の成長や口腔の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、永久歯が生え始める時期(2歳から4歳)までにおしゃぶりを卒業することが推奨されています【5】。
耳の感染症リスク
一部の研究では、おしゃぶりの長期使用が中耳炎のリスクを増加させる可能性があることが示されています。
頻繁におしゃぶりを使う赤ちゃんは、耳の感染症にかかりやすいとされています【6】。
母乳育児への影響
おしゃぶりの使用が早すぎると、母乳育児に影響を与えることがあります。
特に、母乳育児を始めたばかりの新生児には、乳首混乱を引き起こす可能性があるため、母乳育児が確立するまではおしゃぶりの使用を控えることが推奨されています【7】。
3. おしゃぶりの正しい使い方
適切なタイミングで使用
おしゃぶりを使用する際は、赤ちゃんが非常に不安定な時や眠りにつく前など、適切なタイミングで使用することが重要です。
また、赤ちゃんが満足している時や母乳を飲んでいる時には、おしゃぶりを控えるようにしましょう。
清潔を保つ
おしゃぶりは常に清潔を保つことが大切です。定期的に洗浄し、使用前に熱湯消毒を行うことで、感染症のリスクを減らします。
また、劣化や破損が見られた場合は速やかに交換しましょう。
卒業のタイミング
おしゃぶりの使用を段階的に減らし、2歳から4歳の間には完全に卒業することが推奨されます。
赤ちゃんの発達や成長に合わせて、無理のない範囲で少しずつおしゃぶりの使用を減らしていきましょう。
まとめ
おしゃぶりは赤ちゃんに安心感を与え、睡眠の促進やSIDSのリスク軽減といった効果がありますが、歯科への影響や耳の感染症リスク、母乳育児への影響といった注意点も存在します。
適切なタイミングで使用し、清潔を保つこと、そして成長に合わせて段階的に卒業させることが重要です。
おしゃぶりの利点と注意点を理解し、赤ちゃんの健やかな成長をサポートしましょう。
参考文献
- American Academy of Pediatrics (AAP). “Pacifiers: Are they good for your baby?”. AAP Website
- Howard, C. R., & Howard, F. M. (1999). “The effects of early pacifier use on breastfeeding duration.” Pediatrics.
- Hauck, F. R., et al. (2005). “Pacifier use and sudden infant death syndrome: results from the CESDI/SUDI case control study.” Archives of Disease in Childhood.
- Moon, R. Y., & Task Force on Sudden Infant Death Syndrome. (2016). “SIDS and Other Sleep-Related Infant Deaths: Evidence Base for 2016 Updated Recommendations for a Safe Infant Sleeping Environment.” Pediatrics.
- American Dental Association (ADA). “Pacifiers: Are they good for your baby’s teeth?”. ADA Website
- Niemelä, M., et al. (2000). “Pacifier as a risk factor for acute otitis media: a randomized, controlled trial of parental counseling.” Pediatrics.
- Jenik, A. G., et al. (2009). “Does the recommendation to use a pacifier influence the prevalence of breastfeeding?.” Journal of Pediatrics.