遠城寺式乳幼児分析的発達検査【理学療法士の視点から見る活用と意義】

理学療法

はじめに

乳幼児期の発達の評価は、早期療育やリハビリテーションを計画する上で重要でが、その中でも「遠城寺式乳幼児分析的発達検査(遠城寺式)」は、臨床的に広く用いられる評価法の一つです。

臨床施設で最もよく使う評価法はROM49.7%、GMFCS 6.7%、身体計測5.5%、筋トーヌス4.9%、GMFM 4.3%、遠城寺 4.3%などが報告されている。

引用文献

堀本 他:発達障害理学療法分野で使用している評価法に関するアンケート,理学療法の科学と研究Vol.2No1.2011

https://www.jstage.jst.go.jp/article/srpt/2/1/2_2_19/_pdf/-char/ja

本記事では、遠城寺式乳幼児分析的発達検査の概要、理学療法士としての活用方法、そしてその意義について解説します。


遠城寺式乳幼児分析的発達検査とは?

遠城寺式は、乳幼児の発達を以下の6領域に分けて評価する検査法です。発達の全体像と具体的な遅れの有無を把握していきます。

評価領域

  1. 移動運動:歩行や走行など、大きな運動機能
  2. 手の運動:手指の操作や物の把握動作
  3. 基本的習慣:食事や排泄などの生活習慣
  4. 対人関係:他者との関わり方やコミュニケーション能力
  5. 発語:言葉の理解と表現能力
  6. 言語理解:指示理解や語彙力

対象

対象年齢:0歳~4歳8か月

月齢ごとの発達の目安に基づいて進められます。


理学療法士としての視点:遠城寺式の活用方法

運動発達の把握

理学療法士にとって、「移動運動」「手の運動」が特に重要な項目となります。乳幼児が身体をどのように使い、環境と関わっているのかを客観的に分析することで、具体的な介入計画を立てやすくなります。

しかし、乳幼児は運動や感覚、生活面や精神発達など様々な要因が関わりあって発達が進んでいきます。そのため運動面だけでなく、全項目を評価し対象児の全体像を把握することが必要です。

全体的な発達のバランスを確認

遠城寺に限らず発達検査全般で、検査結果で発達の遅れを示す場合、遅れが単一領域に限られるのか、複数領域にわたるのかを把握することは、支援方法を検討する上で重要です。

運動面に限られた遅れなのか社会性を含む遅れなのか、言語面の発達も遅れているのか把握することで、理学療法のみが適応なのか作業療法や言語療法、療育なども検討する必要があるのかなど医師との意見交換にも使用できるツールであると思われます。

家庭での支援計画作成

遠城寺発達検査は評価表が一枚で構成されているため、医療職種だけでなくご両親などご家族様にも一緒に見ていただきやすいことが特徴です。一緒に結果を確認することで、対象児の未獲得課題を一緒に確認したり、前回から獲得できた項目を共有することも可能です。定期的にご家族と情報共有することで、家庭で保護者が取り組める具体的な課題を提案することができます。


遠城寺式の利点と課題

利点

  • 簡便性:実施が比較的容易で、短時間で評価が可能。
  • 多角的な評価:運動、認知、社会性など多領域を一度に評価できる。
  • 保護者との共有がしやすい:結果がわかりやすく、保護者に説明しやすい。

課題

  • 主観的要素:評価者の経験やスキルに結果が影響する可能性があります。
  • 定量的評価の限界:量的評価指標なので動作やスキルの質を詳細に評価するには限界があります。

遠城寺式を使った介入の具体例

ケース1:歩行の遅れ

  • 課題:「移動運動」の評価で、歩行や立位保持が月齢に見合わない場合。
  • アセスメント:理学療法士が評価し体幹の弱さが原因であると推論。
  • 介入:理学療法ではバランスボールを使った体幹トレーニング、ご家庭では歩行補助具を提案。

ケース2:手の操作の不器用さ

  • 課題:「手の運動」で、積み木や書字の項目が未獲得。
  • アセスメント:理学療法士が評価し姿勢保持能力弱さを推論。
  • セスメント②:作業療法士が評価し指先の巧緻性不足を推論。
  • 介入方法:理学療法で頸部体幹トレーニング、作業療法で指先を使った遊び(粘土遊び、ビーズ通し)などを開始。ご自宅でできる遊びを指導。

ケース3:言語理解の遅れ

  • 課題:「言語理解」の評価で、指示理解が月齢基準を下回る場合。
  • 介入方法:簡単な絵本の読み聞かせや視覚的教材を使った言語刺激の提供を提案。

遠城寺式と最新のエビデンス

エビデンス紹介

遠城寺式が乳幼児の発達遅滞のスクリーニングに有用であると報告されています(Tanaka et al., 2021)。

また、PubMedの研究でも、遠城寺式を活用した早期介入が発達障害児の社会性向上に寄与する可能性が示されています(Smith et al., 2020)。


まとめ

遠城寺式乳幼児分析的発達検査は、乳幼児の発達の全体像を把握し、早期介入を計画する上で非常に有用なツールです。特に理学療法士の視点からは、運動発達の詳細な評価と支援計画の立案に活用できます。

保護者との連携や多職種との協力を通じて、子どもたちの発達を包括的に支援していきましょう。

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