自閉スペクトラム症とリハビリ

理学療法

自閉スペクトラム症(ASD)の疑いもしくは診断がついた場合、最近はリハビリを早期から始めることが増えてきています。

自閉スペクトラム症(ASD)の症状については以前の記事でまとめています。

自閉スペクトラム症(ASD)について知ろう
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ご興味のある方はご覧頂ければと思います。

今回はASD児のリハビリってどんなことをするのか、まとめていきたいと思います。

お子さんのリハビリを始めた方がいいのか迷われている方や、リハビリを始めるように医師に勧められているけどどんな事をするのか不安に思われている方のお役にたてればと思います。

ASD児のリハビリ

理学療法(PT)

理学療法は英語でPhysical Therapyであり、医療福祉の現場では理学療法士(Physical Therapist)や理学療法(Physical Therapy)のことをPTと略して呼ばれることが多いです。

理学療法では「寝返る」「ハイハイ」「座る」「立つ」「歩く」など基本的な運動能力の獲得や向上を主な目的とします。

ASDのお子さんでは体幹の弱さや手足の不器用さを認めることがあり、その影響で乳幼児期より運動発達に遅れが出る場合があります。

理学療法を始める場合、最初に理学療法士がお子さんの動作能力や筋力などを確認して、バランスの悪さや発達の遅れの原因を評価していきます。

そして、運動発達の特徴が把握できれば、それぞれのお子さんに必要な運動プログラムを組んでいきます。

大人と違い【トレーニング】として運動を行うことは年齢的にも難しいため、全身を使った遊びを通して体幹を鍛えたりバランスの改善に取り組んでいくことが多いです。

自閉スペクトラム症のお子さんでは、乳幼児期から運動発達に遅れが出る可能性があると報告されています。

そのため、お座りやハイハイの獲得が遅い、1歳を過ぎても立ったり歩いたりしない等で定期検診や病院受診の際に発達の遅れを指摘されることがあります。

行政や担当医の方針によっても異なりますが、私が勤務している病院では運動面の発達が遅れているお子さんが受診された場合、確定診断がつく前から理学療法も早めに処方され運動発達面の評価と定期的なリハビリ(理学療法)を行っています。

作業療法(OT)

作業療法は英語でOccupational Therapyで、作業療法もしくは作業療法士(Occupational Therapist)を略してOTと呼ばれます。

「作業」を通して日常生活の動作で困らないようサポートを行います。お子さんの場合は作業=遊びでもあり、遊びや活動を通して精神面や運動面に対しアプローチを行います。

また様々な感覚を統合して理解や行動を促す「感覚統合理論」を用いて、こどもたちの学習や行動、社会的発達の向上などを目標に作業療法を行うこともあります。

自閉スペクトラム症のお子さんの場合、手先の不器用さや感覚過敏/鈍麻などの影響で食事を自分で食べたり着替えることができない、お絵かきが苦手なことがあります。

作業療法では作業を通して、これらの課題に向き合い日常生活動作を獲得できるように促していきます。

「作業=遊び」を通して日常生活動作の獲得を目指すため、理学療法と比較しやや年齢が大きくなってから適応となることが多いです。

言語聴覚療法(ST)

言語聴覚療法は英語でSpeech Therapyで、言語聴覚療法もしくは言語聴覚療法士(Speech Therapist)をSTと略されます。

「食べる」、「話す」、「コミュニケーション」などのリハビリを担っていきます。

自閉スペクトラム症のお子さんでは、必要に応じて言葉の獲得もしくはコミュニケーションの獲得などを目標にリハビリを行っていきます。

療育

正確にはリハビリテーションとは異なりますが、「療育」という概念があります。

【医療】と【教育】を合わせた造語ですが、数十年前から使われている比較的昔からある概念です。

最近では児童発達支援事業所や放課後等デイなどで行われる支援=療育のように言葉が使われていることが多いよに感じます。

療育は保育士が担うことが多く、お子さんの特性に応じてコミュニケーションや遊びを工夫しながらお子さんに接していきます。

集団療育や個別療育など施設ごとに特徴があります。

低年齢の場合は個別から始めて、少しずつコミュニケーションがとれるようになってくると徐々に集団療育に移行していく場合もあります。

まとめ

自閉スペクトラム症はそれぞれのお子さんにより特性が異なります。

PTやOT、STが特性に応じたリハビリを行うことで運動発達や日常生活、コミュニケーション能力の向上を目指していきます。

リハビリ以外にも保育士が行う療育などもあり、いろんなスペシャリストが関わることでお子さんの発達のお手伝いを行っていきます。

医療機関でリハビリを行う場合は医師の指示が必要です。

自閉スペクトラム症と診断されたからといって全員にリハビリを行うわけではないので、お子さんの発達面に不安がある場合は、行政や主治医に相談して頂くことをお勧めします。

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