運動発達の遅れとは
運動発達の遅れ=運動発達遅滞(Motor Developmental Delay)とは、子どもの運動機能が同年齢の平均的な発達基準に比べて遅れている状態を指します。
一般的に、乳幼児や小児期における運動発達には、首が座る、寝返る、座る、歩くといった大きな身体運動(粗大運動)や、手や指の細かい動作(微細運動)が含まれます。
これらの発達が予想される時期に達していない場合、運動発達遅滞が疑われます。
主な原因
運動発達遅滞の原因は様々ですが、主に以下のような要因が挙げられます。
先天的要因
筋力の低下や筋緊張以上、神経由来の麻痺などが影響して運動発達が遅れる可能性があります。
代表的な疾患として脳性麻痺、ダウン症、筋ジストロフィーなど、遺伝的または神経筋疾患が挙げられます。これらの疾患により、筋力の低下や筋肉の協調性に問題が生じ、運動能力に遅れが出ることがあります。
医師の診察により症状に応じて必要な検査を行い、診断をしていきます。運動発達の遅れだけでなく手足の明らかな症状があっても確定診断がつくまでに時間がかかることがあります。
環境的要因
栄養不良や、十分な運動機会の欠如などの環境的な要因も発達遅滞の要因で運動発達が遅れることもあります。
乳幼児の場合は離乳食以降の栄養摂取のバランスにより貧血になることあり、長期的な貧血は運動発達の遅れを引き起こす可能性が研究で報告されています。
また家庭内での刺激や遊びの機会が少ない場合も、運動能力の発達が遅れることがあります。
感覚的問題
視覚(目)や聴覚(耳)に問題がある場合、周囲との相互作用が制限され、結果として運動発達が遅れることがあります。
症状
運動発達遅滞の主な症状は、以下のような動作やスキルが他の子どもより遅れていることです
- うつ伏せの姿勢から頭を持ち上げるのが遅い
- 首座りが遅い
- 座る、這う、立ち上がる、歩くのが遅い
- つかむ、つまむ、手を使った遊びが苦手(手先が不器用)
- 体のバランスを取るのが難しい(よくこける等)
運動発達遅滞の診断
医師が診察を行い、必要に応じて理学療法士が発達スクリーニング検査などを行うことで子どもの運動能力を評価します。
スクリーニングには、親からのヒアリング、身体的な観察、標準化された発達チェックリストを使用することがあります。
医師による診察の結果、診断が確定された場合は専門的な治療や支援を受けることになります。
治療と支援
運動発達遅滞が確認された場合、次のようなアプローチが取られることがあります。
理学療法
筋力強化、バランス能力の向上、基本的な運動スキルを促進するための運動療法が行われます。
首座り、寝返り、おすわりやハイハイなど基本的な身体の動かし方や姿勢のとり方、日々の生活におけるポイントについてなど指導を受けることもできます。

作業療法
日常生活動作(例:ボタンを留める、スプーンを持つ)の習得を支援するためのリハビリが行われます。
理学療法よりも日常生活に直結する手先の使い方などを練習することが多く、理学療法よりやや高めの年齢から開始することが多いです。

早期療育
運動発達以外にも発達の遅れを有する場合は、療育を受けることもあります。一般的に保育士などが担当することが多いです。早期に適切な介入を行うことで、子どもの自発性やコミュニケーション能力への影響が期待されます。
まとめ
運動発達遅滞は、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。しかし子どもは一人一人体格も筋力も異なり、個人差で遅い場合もあります。周りと比較し心配になるとおもいますが、一人で悩まずに医師や保健師など専門家に相談することをおすすめします。
家庭や学校、医療機関との連携を図りながら、子どもが健やかに発達できる環境を整えていきましょう。
引用文献
- 田中, 一郎.「運動発達遅滞に関する臨床的研究」. 日本理学療法学会誌, 2020.
- 高橋, 幸子.「発達障害児に対する運動療法の効果」. 発達障害研究, 2019.



