こどもの不器用や運動音痴の原因、発達性協調運動障害かも

子どもの発達

子どもがよく転ぶ走り方がどこかぎこちない箸やハサミを使うのが苦手(手先が不器用)などの症状がある場合、発達性協調性運動障害が原因かもしれません。

運動が苦手、不器用で上手に作業ができないなど失敗経験の繰り返しは、運動や勉強に対して消極的になるなどお子さんの自尊心の発達にも影響を与える場合があります。

経験不足や練習不足が原因の場合も考えられますが、もしかすると発達性協調運動障害が原因の場合も考えられます。その場合、医療機関や行政に相談するなどご両親が対応できる方法も変わってきます。

あまり聞きなれない言葉だと思いますが発達性協調運動障害について理解することで、お子さんの「運動が苦手」や「不器用」の理由がわかるかもしれません。

この記事では、発達性協調運動障害の症状とその原因、対応についてまとめていきます。

発達性協調運動障害(DCD)とは

発達性協調運動障害とは英語でDevelopmental Coordination Disorderといい、頭文字をとってDCD と略して呼ばれます。

協調運動とは?

「協調運動」という言葉が聞き慣れない方も多いと思います。

人は視覚や触覚など様々な(感覚)情報を脳でまとめ、体を動かすときに適切な動きの速さ・強さ・大きさなどをコントロールしています。

協調とは感覚の情報をまとめ、運動の目的などに基づいて体の動きや姿勢/バランスをコントロールする能力であり、人が身体を動かすうえで非常に重要な脳の機能です。

協調運動とは、この脳の機能によって行われる「身体の動き」を指します。

例えば、「コップに入ったジュースを飲む」場合、まず①目でコップの位置を把握し、②コップまでの最短距離で手を伸ばし、③コップの大きさや中身の量からどの程度の重さかを予測、④握るために必要な力を予測してコップを握って持ち上げる、⑤コップから口まで最短距離でコップを運んで飲む…といった作業が無意識のうちに行われています。

これらの一連の作業が協調運動であり、視覚・触覚などいろんな感覚情報を統合したうえで動作が行われています

DCDの原因

DCDの原因、自分のイメージする運動予測と身体の動きをマッチ(協調)させて、目的の運動を実行する過程の障害(脳の機能障害)が原因である説が有力とされています。

DCDの発症頻度

・5〜11 歳のうち5〜6%でDCDの診断あり

・青年期になっても50〜70%と高い頻度で症状は残存するといわれている

・自閉症スペクトラム障害(ASD)の約80%、注意欠陥多動性障害(ADHD)の約30~50%にDCDが併発するといわれている

DCDの兆候

・乳幼児期の歩行獲得時期の遅れ、発語の遅れ、生活動作の自立の遅れなど

・乳幼児期から発達の遅れを示す場合が多い

DCDの症状

乳児期

□寝返りがなかなかできない

□”お座り”が不安定、姿勢に傾く

□ハイハイが下手、左右差があったり動作がなかなか上達しない

□なかなか歩けるようにならない、動きに左右差がある

幼児期

□歩けるようになっても、こけやすい

□走れるようになっても、動きがぎこちない

□ジャンプができない

□階段の上り下りが苦手、足を揃えながらでないと上り下りできない

□ブランコやすべり台が苦手

□三輪車が苦手

□お絵描きや塗り絵が苦手

□箸やスプーンを上手に使えない

学童期

□体育が苦手

□字を書くことが苦手、時間がかかる

□自転車に乗れない

□よくこける

DCDの子どもに対する対応

DCDの症状は他者から理解されにくく、「怠けている」「運動不足だ」など誤解を受ける可能性があります。本人も運動や勉強に対して苦手意識を持ったり、情緒・社会性の発達や自尊心の低下につながる可能性もあります。

そのため、まずはご両親が本人の訴えをよく聞いてあげること、そして症状に気がついた時点で専門の医療機関や行政に受診・相談することで、必要なサポートを受けられる可能性があります。

療育

児童発達支援事業所や放課後等デイサービスで、専門の知識を有した保育士などのスタッフが療育を行います。

遊びやコミュニケーションを通して発達の援助を行っていきます。サービスを受けるためにはまず行政に相談する必要があります。

リハビリテーション

必要に応じて理学療法・作業療法・言語療法といった専門のリハビリを行います。病院で行う場合は医師の指示のもとに行うため、まずは受診が必要です。

また福祉分野で療育の一環として理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がいる療育施設ではリハビリテーションを受けられる場合もあります。

理学療法

理学療法では「座る」・「立つ」・「歩く」・「ジャンプ」といった粗大運動の発達を目標に、体幹や手足の発達の促通/バランス機能の向上を図っていきます。

作業療法

作業療法では、「食事」・「字を書く」・「着替え」などの日常生活の動作獲得を目標に、指先の細かい練習や姿勢保持の練習などを中心に行っていきます。また感覚の統合の練習などを行う場合もあります。

言語療法

言語療法では「食べる」・「話す」・「聞く」など食事やコミュニケーションに関する能力に対してアプローチしていきます。

まとめ

□「不器用」や「運動が苦手」な原因は発達性協調運動障害の可能性がある

□まずはご両親が理解をしてあげる、必要であれば受診や相談できる機関を探す

□発達性協調運動障害と診断され場合は療育やリハビリを受けられる可能性がある

DCDの運動療法:エビデンスに基づくアプローチ
DCDとは? 発達性協調運動障害(DCD)は、運動技能の発達に問題を抱える子どもに見られる障害です。 詳しくは他の記事にまとめているので参考にしていたば幸いです。 この記事では、DCDに対する運動療法の効果とエビデンスに基づくアプローチにつ...
療育のエビデンス:効果的な介入方法とその成果
療育の基本概念 療育は言語療法、理学療法、作業療法、行動療法など、多岐にわたる専門的な支援を含む広範な領域です。 これらの療法は、個々のお子さんのニーズに合わせてプランニングされます。 療育の効果に関するエビデンス 早期介入の重要性 先行研...
子どもの利き手はいつ決まるの?その時期と影響を探る
利き手とは? 利き手とは、日常生活の中で最も頻繁に使われる手のことを指します。 一般的に、右利き、左利き、両利きに分かれます。利き手の決定には遺伝的要因と環境的要因が影響を及ぼします。 「どっちの手でスプーンをもたせる練習をした方が良い?」...
タイトルとURLをコピーしました